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『王の綽名』

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王は「あだ名」で読むと、こんなに面白い

『王の綽名』は中近世のヨーロッパの王たちにつけられたあだ名から、その人物と時代を眺めていく歴史エッセイです。

彼らには、ずいぶん容赦のないあだ名がつけられています。
例えば、禿頭王、肥満帝、青歯王、合羽王、不能王など。
なぜ彼らはそのような名前で呼ばれるようになったのでしょうか?

本書は、8世紀から19世紀までの王侯を一人4頁で紹介し、55のあだ名の由来とその人物の生涯をたどります。
入口にあるのは、インパクトのあるあだ名です。
しかし、その背景を知ると、王位をめぐる骨肉の争い、政略結婚、宗教対立、戦争といった時代の姿が浮かび上がってきます。
読み終わった時にはヨーロッパの1000年の歴史のイメージが見えてきます。

一篇ごとに独立したコラムとして気軽に読めるところも魅力です。
そして年代順に読みつないでいけば、ヨーロッパの各国が形作られていく約千年の歴史も見えてきます。
難しい年号や事象ではなく、人間臭い「あだ名」から世界史に出会える書です。

書誌情報

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・タイトル:『王の綽名』
・著者:佐藤賢一
・出版社:日経BP
・発売日:2023/11/10
・ページ数:228頁

目次


小王  フランク王 ピピン1世
敬虔帝 フランク皇帝 ルートヴィッヒ1世
禿頭王 西フランク王 シャルル2世
肥満帝 フランク皇帝 カール3世
単純王 西フランク王 シャルル3世
美髪王 ノルウェー王 ハーラル1世
青歯王 デンマーク王 ハーラル1世
捕鳥王 東フランク王 ハインリヒ1世
合羽王 フランス王 ユーグ・カペー
殉教王 イングランド王 エドワード
聖大公 キーウ大公 ウォロディーミル1世
征服王 イングランド王 ウィリアム1世
文人王 ハンガリー王 カールマーン
勇敢王 カスティーリャ王 アルフォンソ6世
戦士王 アラゴン王 アリフォンソ1世
修道士王 アラゴン王 レミーロ2世
赤髭帝 神聖ローマ皇帝 フリードリヒ1世
尊厳王 フランス王 フィリップ2世
獅子心王 イングランド王 リチャード1世
欠地王 イングランド王 ジョン1世
入植王 ポルトガル王 サンシュ1世
熊侯  ブランデンブルク侯 アルブレヒト1世
詩人王 ナバラ王 テオバルド1世
黒女伯 フランドル女伯 マルグリット2世
長脛王 イングランド王 エドワード1世
美男王 フランス王 フィリップ4世
フランスの雌狼 イングランド王妃 イザベラ
金袋大公 モスクワ大公 イヴァン1世
大口女伯 チロル女伯 マルガレーテ
残酷王 ポルトガル王 ペドロ1世
黒太子 イングランド王太子 エドワード
良王  フランス王 ジャン2世
悪王  ナバラ王 カルロス2世
賢王  フランス王 シャルル5世
狂王  フランス王 シャルル6世
勝利王 フランス王 シャルル7世
突進公 ブールゴーニュ公 シャルル
平和公 サヴォイア公 アメデオ8世
豪華王 ロレンツォ・デ・メディチ
ドラキュラ公 ワラキア公 ヴラド3世
航海王子 ポルトガル王子 エンリケ
不能王 カスティーリャ王 エンリケ4世
カトリック両王 カスティーリャ女王 イザベル1世&アラゴン王 フェランド2世
狂女王 スペイン女王 フワナ1世
血塗れ女王 イングランド女王 メアリー1世
処女王 イングランド女王 エリザベス1世
慎重王 スペイン王 フェリペ2世
待望王 ポルトガル王 セバスティアン1世
雷帝  ロシア皇帝 イヴァン4世
助平ジジイ フランス王 アンリ4世
殉教王 イギリス王 チャールズ1世
太陽王 フランス王 ルイ14世
最愛王 フランス王 ルイ15世
解放皇帝 ブラジル皇帝 ペドロ1世
市民王 フランス王 ルイ・フィリップ

感想

55の綽名、55の物語

綽名は、同時代の人や後世の人が、王の特徴を簡潔に示す記号のようです。
しかし由来をたどると、同時代の評判だけでなく、政治的な意図や言葉の変化、伝承などが重なっていることがわかります。
綽名は史実の単純な要約ではありません。
それぞれ由来をたどる一篇一篇が小さな物語となっていて、どれも面白く読めます。

「赤髭帝」に見える神聖ローマ帝国

印象に残ったのが、「赤髭帝」フリードリヒ・バルバロッサです。
フリードリヒはドイツ語の名前ですが、バルバロッサは「赤い髭」を意味するイタリア語です。
なぜ皇帝の名前と綽名が異なる言語でつけられているのでしょうか。
実はそこに、ドイツ王にしてローマ王という神聖ローマ皇帝の不思議な性質、また赤髭帝のイタリア政策が表れています。
綽名そのものが、帝国の広がりを伝えているのです。

また王の綽名は、個人的には外国語の原名より「尊厳王」「獅子心王」「賢王」といった日本語名の方がかっこよく感じます。
歴史研究などの中で徐々に作られていったのだと思いますが、昔の人はずいぶんうまく日本語に訳したものです。

綽名から始まるヨーロッパ史

本書を読み進めると、身体的特徴や性格を示すだけに思えた綽名が、王家の継承争い、宗教対立、戦争、その時代へとつながっていきます。
一人4頁の短い物語を重ねるうちに、断片だった人物たちが互いに結びつき、ヨーロッパの約千年の歴史が一つの流れとして見えてきます。
本書は綽名という周縁的で人間くさい入口から、歴史の大きな構造へと読者を導いてくれます。

おすすめの人

・中近世ヨーロッパ史の読みやすい本を探している人
・ヨーロッパの王様、王室について知りたい人

あと一冊

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ポイント

「赤髭帝」フリードリヒ・バルバロッサが皇帝として生きた神聖ローマ帝国とは、どのような国だったのでしょうか。本書は、その誕生から消滅まで約千年の歴史をたどり、ドイツ、イタリア、教皇をめぐる複雑な仕組みを解き明かします。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じが好きです。

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