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書誌情報
・タイトル:『ごみ収集の知られざる世界』
・著者:藤井誠一郎
・出版社:筑摩書房
・レーベル:ちくま新書
・発売日:2024/10/10
・定価:880円+税
・ページ数:197頁目次
はじめに
第1章 「あなたが出したごみがどうなるか」知ってますか
第2章 ごみ収集にかかわる仕事はいろいろありすぎる
第3章 ごみと地域は表裏一体
第4章 一緒に考えるごみと持続可能性
第5章 これからのごみの話をしよう
おわりに
感想
「ごみを出す」という日常の何気ない行為。
その後ろにどんな仕組みがあり、どんな人たちの働きがあるのか。
当たり前すぎて、普段あまり考えないテーマを真正面から描いたの本書です。
本書を読んでまず感じたのは、ごみが「消える」わけではないという当然のことでした。
私たちが袋に入れて収集所に置いたごみは、清掃作業員によって回収され、分別され、リサイクルに回され、あるいは処分されます。
その過程は決して楽ではなく、重労働であり、危険と隣り合わせでもあります。
リサイクルにしても、再利用されるまでには膨大な人の手間がかかっています。
そのことに私たちは目を向ける必要があると思いました。
同時に、本書を読んで、清掃に従事する人々への差別や偏見の根深さも感じました。
正直、こんなことを言われたりするのかと驚きもありました。
エッセンシャルワーカーと言われた時期もありましたが、コロナも過ぎれば忘れられるようです。
しかし、彼らがいなければ都市生活は成り立ちません。
社会の根本を支えているにもかかわらず、正当な評価を得られない構造に強い違和感を覚えます。
また、ごみの「行きつく先」にも衝撃を受けました。
最終処分場はすでに限界に近付いており、今後の維持には多くの課題があります。
これは行政だけの問題ではなく、私たち一人ひとりがごみを減らす努力をすることに大きな責任があると痛感しました。
単なる環境の問題ではなく、都市の持続可能性そのものに関わる問題なのです。
さらに本書で印象的だったのは災害時のごみ処理の問題です。
普段は当たり前に回っている収集や処理が、災害の際には一気に崩壊する。
本書で紹介されている能登半島地震での実例を見るとそのリスクの大きさがよくわかりました。
災害に対応できる強靭なごみ処理の仕組みづくりは、防災・減災の一環としても極めて重要です。
興味深かったのはイベント時のごみ処理の裏側です。
花火大会などの華やかな場の陰で、膨大なごみを処理するために多額の費用と労力がかけられている現実があります。
来場者に「できるだけ持ち帰ってください」とアナウンスするだけでも負担は大きく減らせるのではないかと感じました。
本書は、ごみ処理の現場を丁寧に追うことで、日常の裏側に潜む社会の縮図を見せてくれます。
この本を読んで、「ごみを減らす」「リサイクルに協力する」という当たり前のことに、もっと真剣に取り組まなければならないと強く思いました。
そして清掃に携わる人々に対する尊敬と感謝の気持ちを忘れないようにしなくてはなりません。
ごみは社会で暮らす全ての人に関わることです。
よってこの本は全ての人に読んでもらいたいと思います。