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『読み書きのない世界 無文字社会の文化を知る七章』

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書誌情報

・タイトル:『読み書きのない世界 無文字社会の文化を知る七章』
・著者:山下宗久
・出版社:筑摩書房
・レーベル:ちくまプリマ―新書
・発売日:2026/1/8
・ページ数:192頁

目次

はじめに
第一章 無文字社会にお金はありましたか?
第二章 無文字社会に法律はありましたか?
第三章 無文字社会にはどんな娯楽がありましたか?
第四章 無文字社会の歴史を知る方法は?
第五章 無文字社会に宗教はありましたか?
第六章 無文字社会にメディアはありましたか?
第七章 今でも無文字社会は残っていますか?
おわりに

感想

私たちの社会では文字があることが当たり前です。

例えば、契約や法律、歴史も、文字があるからこそ成り立っています。

では、文字が存在しない世界というのはどのような社会なのでしょうか。

本書は、その世界を垣間見せてくれます。

その世界は豊饒で、文明的です。

本書で紹介されるのは、文字を持たない、あるいは長らく文字を必要としなかった社会の具体的な姿です。

特にシベリアの少数民族サハ人の文化が重点的に描かれ、無文字社会における通貨、法律、娯楽、歴史、宗教、メディアがどのように営まれたかを考えていきます。

例えば、無文字社会では当然のことながら契約書というものがありません。

その代わりにモンゴルでは、決めたことの履行を口約束で定めます。

彼らにとって口約束を必ず果たすことが誇りとなっているのだそうです。

言葉が軽くなりがちな現代人にとって、刺激的な話ではないでしょうか。

また無文字社会では声が重視されていました。

文字がないので、メールや新聞などはありえませんし、記録メディアもないので直接相手に伝える(ないし伝言する)しかありません。

その分、人々は記憶することが得意で、長い歌を完全に暗記し、代々伝承してきました。

さらに人と人との関わりを濃密にし、相手に直接声で大切なことを伝えました。

果たして現代の人はどれほど相手の顔を見てコミュニケーションをとっているのか。

この辺りの、文字社会との違いから学べることは多いのではないでしょうか。

本書の意義は、無文字社会を理想化する点にはありません。

そうではなく、文字を当然視する私たちの感覚を問い直すことにあります。

膨大な情報に囲まれた現代において、覚えることや語り合うことの意味は何なのか。

文字は文明を発展させましたが、同時に何かを手放させているのではないでしょうか。

本書を読んで、そんな疑問への示唆を得ることができました。

多くの人に、いったんスマホを置いて読んでみてほしい一冊です。

おすすめの人

・文字に興味のある人
・文化人類学、少数民族に関心のある人
・情報過多社会に疑問を感じる人

あと一冊

ポイント

こちらの本でも文字を使わないで大切なことを伝える人々が多数でてきます。GPSに頼ることで失われた「道を見つける力」を問う旅は、文字に頼らない、驚異的な人間の能力との出会いです。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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