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『なぜ一流選手がPKを外すのか サッカーに学ぶ究極のプレッシャー心理学』

2025年10月14日

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書誌情報

・タイトル:『なぜ一流選手がPKを外すのか サッカーに学ぶ究極のプレッシャー心理学』
・著者:ゲイル・ヨルデット(著),福井久美子(訳),アーセン・ベンゲル(序文)
・出版社:文藝春秋
・発売日:2025/4/24
・ページ数:374頁

目次

アーセン・ベンゲルによる序文
序章
第1章 襲いかかるプレッシャー
第2章 プレッシャーをコントロールせよ
第3章 プレッシャーにつけ込む
第4章 チームで団結してプレッシャーに立ち向かう
第5章 プレッシャー対策
第6章 プレッシャーのマネジメント
エピローグ
謝辞

参考文献
訳者あとがき

感想

私は野球は好きなのですが、サッカーにはあまり詳しくありません。

たまにサッカーを見ていて、なぜ世界のトップクラスの選手ですらPKを外してしまうのか、不思議でした。

その疑問に真正面から答えてくれるのが本書です。

スポーツ心理学とサッカーの関係を研究している著者は、世界屈指のPK研究家と呼ばれます。

この本は、サッカーにおけるペナルティキック(PK)をテーマに、なぜ実力や技術が高い選手でも失敗することがあるのかを「プレッシャー」「心理」に着目して分析するものです。

本書はタイトルに違わず、本当に最初から最後までPKの話です。

キーパー側の視点も、キッカーを妨害するという観点以外にはあまり出てこず、徹頭徹尾、PKキッカーの視点からPKのプレッシャーが語られます。

各章では、極限の緊張がもたらす影響、それをコントロールする方法、キーパーによる心理的揺さぶり、チームでの支援体制、効果的な練習方法、されにはリーダーが果たすべき役割までが語られます。

本書を通読して驚いたのは著者のPK研究の徹底ぶりで、何気ない動きまで詳細に渡って分析した結果は説得力に富みます。

印象に残ったのは以下の名将ベンゲルの2010年の言葉です。

「過去10〜15年は、フィジカルと戦術の進化の時代だった。しかしこの先10〜15年、間違いなくメンタルの時代に入っていく。(p297)」

しかし、著者はそうした進化の兆しはまだあまり見られないと指摘します。

2024年にベンゲルと話した際も、前進はしているがまだ課題は多いと言っていたそうです。

この問題はプロ野球やメジャーリーグの世界でも同じような状況があると感じます。

メンタル革命の先にあるサッカーや野球を見てみたいですね。

また、これからPKを見る時はキッカーのキック前の動きはもちろん、そこに至るまでの選手や監督の動きまで、楽しむことができそうです。

「失敗できない場面」で人はなぜ動揺するのか——その普遍的な問いを、PKという舞台を通じて見事に描いた一冊です。

サッカーファンやプレーヤーはもちろんですが、プレッシャーに対処する方法を知りたい人にもおすすめです。

また第6章はリーダーとして選手のプレッシャーに対してできることが語られ、とても示唆に富んでいます。

人を導く立場にある人にもおすすめです。

おすすめの人

・サッカーに興味のある方
・プレッシャーに対処する方法を知りたい方
・人を導く立場にある方

あと一冊

ポイント

序文を書いているアーセン・ベンゲルはフランス出身の名将で、長年アーセナルFCを率い、革新的な戦術と育成哲学でプレミアリーグに新風を吹き込んだ人物です。そのベンゲル氏初の自伝となった本書は名将を知るのに最適な本です。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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