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『月は誰のもの? 南極、海洋、アフリカの前例に学ぶ』

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書誌情報

・タイトル:『月は誰のもの? 南極、海洋、アフリカの前例に学ぶ』
・著者:A.C.グレイリング(著),道本美穂(訳)
・出版社:柏書房
・発売日:2025/6/10
・定価:2300円+税
・ページ数:200頁

目次

新版刊行にあたって
序文
はじめに―前例をもとに社会全体で議論しよう
第1章 「グローバル・コモンズ」と人類の財産
第2章 南極大陸を守るための取り組み
第3章 公海と深海を守るための取り組み
第4章 アフリカ争奪戦
第5章 宇宙条約は十分と言えるのか
結論  これから何が起きるのか、私たちに何が何ができるのか
付録1 宇宙条約(1967年発効)
付録2 南極条約(1961年発効)
付録3 海洋法の関する国際連合条約(1982年採択)抜粋

感想

現在、科学技術は目覚ましい進歩を遂げており、人類は月どころか火星への進出すら現実味を帯びてきています。

こうした状況の中で、著者は宇宙開発における国際的な枠組みの整備の必要性を訴えます。

現在、宇宙開発に際して参照されているのは、1967年に発効された「宇宙条約」です。

しかし著者はこの条約成立の歴史的経緯や内容を詳細に検証し、その規定が現代の宇宙開発に対して大きく不十分であることを明らかにします。

もしこのまま各国が急速に宇宙開発を進めていった場合、国家間で利害が衝突し、深刻な問題が発生する可能性があります。

著者は、そうしたトラブルを規制・調整するための枠組みが存在しない現状では、地球上での紛争に発展する恐れすらあると著者は警鐘を鳴らしています。

ではどのような条約が必要なのでしょうか。

著者はその手がかりを過去の国際的な協定に見出そうとします。

検証対象として挙げられるのは、南極と海といった人類の共通領域を対象とした枠組みです。

それぞれの検証結果は示唆に富んでおり、宇宙開発の枠組み作りの難しさを浮き彫りにします。

さらに規制がなされなかった場合どうなるのでしょうか?

その実例として取り上げられるのは、19世紀のヨーロッパ列強によるアフリカ分割です。

当時は各国が自国の利益、威信のために激しい争奪戦を繰り広げました。

著者はこれと同様のことが宇宙開発で再現される可能性が高いと警告します。

そして改めて宇宙開発の国際的な枠組みの必要性を訴えるのです。

この本は良書でした。

明確な主張と説得力のある事例で、真剣に宇宙開発について考えるべきだと考えさせられた内容でした。

多くの方にぜひ読んでもらいたい一冊です。

あと一冊

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ポイント

宇宙空間への進出より確実に、先に問題になるであろう北極海。すでにいくつもの大国が利権を狙ってしのぎを削っています。そんな北極海の現在の情勢を解説した本がこちらになります。人類の行く末に関わる宇宙と北極。どうなっていくのでしょうか?

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。

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