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書誌情報
・タイトル:『ユダヤ人はいつユダヤ人になったのか―バビロニア捕囚』
・著者:長谷川修一
・出版社:NHK出版
・レーベル:世界史のリテラシー
・発売日:2023/11/10
・ページ数:169頁目次
はじめに
第一章*事件の全容 ユダの人々はなぜバビロニアに捕囚されたのか?
第二章*歴史的・宗教的背景 二大勢力のはざまでイスラエル王国はいかに翻弄されてきたか
第三章*同時代におけるインパクト 『ヘブライ聖書』はいつ、なぜ、書かれたのか?
第四章*なぜユダヤ人が迫害の対象になったのか?
おわりに
感想
「世界史のリテラシー」シリーズの一冊である本書は、「ユダヤ人はいつユダヤ人になったのか」という根源的な問いに挑みます。
ユダヤ人とユダヤ教の世界というのは日本人にとってはなじみが薄く、なぜ彼らが幾度も迫害を受けてきたのか、その信仰はいかにして生まれたのか、など疑問に思うことも少なくありません。
著者はその疑問に対する答えをバビロニア捕囚に見出します。
教科書的には、紀元前6世紀、新バビロニア王国のネブカドネザル2世によってユダ王国が滅ぼされ、多くのユダヤ人がバビロンへ強制移住させられた出来事として知られています。
この時に神殿も破壊されたとされ、捕囚はおよそ50年続き、のちにペルシア王キュロス2世の勅令によってユダヤ人は帰還を許されました。
しかし著者は、丹念に聖書を読み解き、この通説に再検討を加えます。
例えばエルサレム陥落後の神殿の破壊ですが、聖書では記述はなく、一部の研究者の間では疑問視されているそうです。
こうした最新の学説を踏まえ、従来の理解を更新しながら、捕囚期の実像に迫っていきます。
捕囚先のバビロンでの日々は、ユダヤ人にとって自らのアイデンティティを考え直す契機でした。
聖書の編纂や律法の整備など、共同体の精神的基盤がこの時代に形作られます。
そして、捕囚の記憶は民族の深層に刻まれ、現代に至るまでユダヤ人の行動や思想を規定し続けていると著者は指摘します。
本書を読んで思ったのは、「民族の記憶」というのは確かにあるのだなということです。
その影響力は想像以上に長く深く、イスラエルをはじめ、今日のユダヤ人社会にも影響を与え続けていると思いました。
国際情勢を理解する上でも、ユダヤ人の歴史を知ることは必須だと私は考えています。
このコンパクトな本は、彼らの複雑な歴史を分かりやすく教えてくれるでしょう。
国際情勢、歴史、宗教に興味のある方におすすめです。
おすすめの人
・古代、中東、ユダヤ人の歴史に興味のある方
・キリスト教、ユダヤ教に興味のある方