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『日本から2時間半で行けるヨーロッパ ウラジオストクを旅する43の理由』

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書誌情報

・タイトル:『日本から2時間半で行けるヨーロッパ ウラジオストクを旅する43の理由』
・著者:中村正人
・出版社:朝日新聞出版
・発売日:2019/7/19
・定価:1600円+税
・ページ数:160頁

目次

はじめに
ウラジオストクへのアクセスと市内中心部
Chapter1 ヨーロッパの町並みを歩く
Chapter2 未知なるグルメシティーを探索
Chapter3 ロシアみやげを手に入れる
Chapter4 市内から気ままに小旅行
Chapter5 ロシアの都市文化を楽しむ
Chapter6 極東ロシアの歴史を尋ねる
ウラジオストクに関するネット情報と書籍案内
電子簡易ビザの発給で自由な旅行が実現している
謎解きをひとまず終えて―魅力はフォトジェニックとスローライフ

感想

ロシア極東に位置する港町ウラジオストクは、日本から最も近いヨーロッパとも呼ばれる独特の魅力の街です。

近年は直行便の開設によって渡航のハードルが下がり、観光地として注目を集めています。

本書は、ウラジオストクの魅力を色々な角度から紹介する一冊であり、旅行ガイドありながら、都市の歴史や文化を味わうエッセイとして楽しめる書となっています。

著者は、長年にわたり極東地域に関わってきた旅行ジャーナリストであり、現地取材に裏打ちされた確かな情報を提供してくれます。

単なる観光情報ではなく、「なぜウラジオストクに行くべきか」という問いに43の切り口で答えます。

例えば、港湾都市ならではの海産物、ソ連時代の面影を残す建築、ロシア正教の聖堂や美術館、カフェ文化や鉄道の旅など、一つ一つの理由がそのまま短い物語になっています。

著者は、日本との距離の近さや歴史的な交流、冷戦における閉ざされた軍港都市としての過去など、背景にある時代の層や文化的多様性を丁寧に掘り起こしています。

この地はウラジオストクという都市ができる前から多民族が交わる場所でした。

先住民、満州、中国、朝鮮、中央アジア、遠くはジョージア、ウクライナ、もちろんロシアも。

彼らの文化が複雑に絡み合い、その混淆こそが今日のウラジオストクの個性を形作っています。

本書では、その歴史の層を踏まえて、現在の街の風景や文化が語られるのが大きな特色です。

また、本書では世界的に有名なシベリア鉄道の最終到達点であることが強調され、ウラジオストクが「ロシアの果て」であると同時に「世界とつながる玄関口」であることが浮かび上がります。

さらに興味深いのは、街の現代的な姿にも目を向けている点です。

若者文化が活発で、日本のサブカルチャー、特にアニメやコスプレが広く受け入れられ、イベントも盛んに開催されています。

日本から近いという地理的要因に加え、文化的交流の積み重ねが、街に親近感を与えていることが伝わってきます。

本書全体で写真や地図も充実しているので、ウラジオストクがより身近に感じられます。

通読して浮かび上がってくるには、ウラジオストクが「日本の近くのヨーロッパ」であることと同時に、「ユーラシア全体が折り重なったアジア」であること、そして多様な人々が行き交った街であることです。

観光に行ってみたい人にとっては具体的な行動の指針となり、歴史や文化に興味のある人には知的好奇心を満たす一冊となるでしょう。

読み終えた時、ウラジオストクは単なる地図上の都市ではなく、多彩な顔を持つ街として心に刻まれるに違いありません。

あと一冊

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ポイント

渤海国は、7世紀末に靺鞨族の大祚栄が建国した国家で、現在のウラジオストクを含む、満洲や沿海州、朝鮮北部を領有しました。それはどんな国家だったのでしょうか?

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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