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書誌情報
・タイトル:『口笛のはなし』
・著者:武田裕熙、最相葉月(著)
・出版社:ミシマ社
・発売日:2025/2/25
・ページ数:280頁目次
はじめに 最相葉月
第一章 人はなぜ口笛を吹くのか
第二章 ぼくが口笛奏者になるまで
第三章 口笛音楽の近現代史
第四章 楽器としての口笛
第五章 口笛奏者の世界
第六章 さあ、口笛を吹いてみよう―実践編
おわりに 武田裕熙
感想
私は口笛が吹けません。
だからこそ自由自在に吹ける人に憧れがあります。
そんな思いで手に取ったのが本書です。
おそらく唯一であろう一冊まるごと「口笛」の本。
著者はプロの口笛奏者である武田裕熙氏とノンフィクションライターの最相葉月氏で、2人の対談形式で話は進んでいきます。
最相氏は「青いバラ」や「絶対音感」などの著作で知られ、科学や音の世界を一般の読者にわかりやすく描き出すことに長けた書き手です。
今回のテーマもとても面白い視点で、口笛の初心者として素朴な疑問を投げかけます。
武田氏は口笛奏者として多くの国際コンクールで優勝し、大会の主催なども行ってらっしゃり、日本有数の口笛奏者です。
その語りは明晰で、研究者としての視点も持ちながら本書で紹介する口笛の世界は奥深く、我々の想像を超えています。
そもそも口笛の世界大会があるのが驚きです。
しかも一つではなく世界各国、複数の大会があり、多くの口笛奏者が参加しているそうです。
たくさん大会があるので、世界中に様々な世界チャンピオンがいます。
それだけ多様な口笛があるのでしょうね。
彼らはプロとして仕事したり、他の楽器を演奏していたり、教室を開いて口笛奏者を育てたりしています。
そもそも認識を改めさせられたのが、口笛が単なる「遊び」や「気まぐれな音」ではなく、きちんとして「楽器」として扱われていることです。
武田氏は、口笛の音がどのように生まれ、どれほど幅広い音域を出せるのかを丁寧に説明します。
ビブラートやタンギングなど、声楽や管楽器と共通する技法があることを知ると、口笛に対する認識ががらりと変わるはずです。
また最相氏が「初心者の視点」から投げかける質問も興味深く、口笛の歴史や迷信、文化的意味までは美広く話題が広がっていきます。
かつては口笛の名手が大衆文化のスターだった時代があり、今はオンライン大会やコミュニティが活発に動いているなど、口笛の世界は意外にも長く豊かな伝統を持っているのです。
さらに本書には、QRコードから実際の演奏を聴ける工夫も施されています。
文章で読んだ内容を耳で確かめられるため、知識と体感がつながる仕掛けになっており、目と耳の往還運動が、口笛という世界を立体的にしてくれます。
口笛が吹けない私にも、この本は「人間の身体が楽器になること」の面白さを教えてくれました。
日常の何気ない行為が、世界に広がる豊かな文化につながっていることを教えてくれる一冊です。
おすすめの人
・口笛、楽器に興味のある人
・口笛が好き、あるいは吹けない人