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書誌情報
・タイトル:『Smart Rivals ビッグ・テックと戦う企業』
・著者:フェン・ジュ、ボニー・インニン・ソウ(著),NTTデータ・コンサルティング・イニシアティブ(訳)
・出版社:東洋経済新報社
・発売日:2025/5/28
・ページ数:278頁目次
訳者まえがき
日本語版によせて
序章 正しい戦いに挑む
第1章 強みを伸ばす
第2章 顧客中心主義を推進する
第3章 プラットフォームの機会を見つける
第4章 エコシステムを育む
第5章 フレネミーを管理する
第6章 ディスラプションから立ち直る
結論 スマート・ライバルになる
特別対談 デジタル時代における競争の新しいルールとは
訳者あとがき(1)
訳者あとがき(2)
感想
いま世界の市場で圧倒的な存在感を放つのが、GAFAMに代表されるビッグ・テックです。
従来からある多くの企業は、彼らの破壊的なビジネスモデルにさらされ、自分たちは敗北するしかないのかと不安を抱えています。
では、そういった企業には敗北する未来しかないのでしょうか?
本書はそういった憂慮に対する力強い解答と成り得る本です。
著者は、ハーバード・ビジネス・スクールで経営学の研究をする専門家と、ビジネス領域を研究し・取材してきたジャーナリスト。
彼らによって執筆された本書の主張はシンプルで、「従来型企業はビッグ・テックの模倣という落とし穴を避け、独自の道を切り開くことで、スマート・ライバルになることを目指すべきだ(p190より)」ということになります。
従来型企業とは、例えばAmazonに対する書店、Uberに対するタクシー業界、Airbnbに対するホテル業界のような既存勢力です。
こういった企業の多くは破壊的で新しいビジネスモデルの前に苦境に陥り、ビッグ・テックを模倣しようとして失敗します。
しかし本書が示すのは、模倣ではなく「独自の優位性を生かし、自分たちのルールで戦う」戦略です。
そのための指針としてビッグ・テックに対する6つの戦略が提示されます。
その6つの戦略とは「①強みを伸ばす」「②顧客中心主義を推進する」「③プラットフォームの機会を見つける」「④エコシステムを育む」「⑤フレネミーを管理する」「⑥ディスラプションから立ち直る」です。
本書ではこれらの戦略を実践して生き延びている「スマート・ライバル」と呼ばれる企業が多数紹介されます。
こういった企業が存在することは、日本の多くの企業の人たちを力強く励ましてくれるはずです。
そこに本書が翻訳された意義があると思います。
とはいえ、本書で書かれている戦略は、ひどく目新しいものではありません。
でも企業を経営する上で根源的に大事なことばかりが挙げられており、この点で本書は企業経営に関わる人なら誰が読んでも得られるものがあるのではないでしょうか。
また訳者のまえがき、あとがきに加え、著者との対談が巻末にあり、より読者の理解を深めてくれます。
デジタル化とAIによって競争は激しさを増していく時代です。
「変化の波に飲まれる」か「自分たちのルールで航路を描く」か、本書はその分岐点に立つ企業に、確かな道筋を示してくれます。
変革を迫られている人、組織を変えたいと感じている人にこそ手に取ってほしい一冊です。
おすすめの人
・従来型企業を経営していて、ビッグテックに攻勢をかけられる可能性のある方
・小さい企業で働き、大きい企業と戦う方
・変革の方向性を求める方