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書誌情報
・タイトル:『修理する権利 使い続ける自由へ』
・著者:アーロン・パーザナウスキー(著),西村伸泰(訳)
・出版社:青土社
・発売日:2025/4/28
・定価:4400円+税
・ページ数:464頁目次
第1章 はじめに
第2章 なぜ修理は重要なのか
第3章 修理の歴史
第4章 修理を阻む戦略
第5章 修理と知的財産
第6章 修理と競争
第7章 修理と消費者保護
第8章 修理を再構築する
エピローグ
解説 修理する権利、あるいは私たちの生を取り戻すための抵抗運動(吉田健彦)
感想
本書は「修理する権利」について特に法律の観点を中心に、様々な角度からその本質や必要性、そしてあるべき形を考察した一冊です。
人類はこれまで、壊れたモノを修理しながら暮らしてきました。
しかし著者は、現代社会においてその「修理する権利」が次第に失われていっていると指摘しています。
例えば、AppleのAirPodsは接着剤やはんだで内部が固定されており、修理が事実上不可能です。
また、ディア社のトラクターは各パーツの制御に内蔵コンピュータを用いており、修理のためにはそのソフトウェアへのアクセスが必要です。
しかしそのアクセス権限はは正規の技術者にしか与えられていないため、農家が自力で修理したり、地元の修理業者に修理してもらうことはできません。
これらは技術的に修理を妨げる例ですが、修理を阻む要因は技術面にとどまりません。
著作権、特許、意匠権、商標権、営業秘密といった法的な仕組みも修理を困難にしているのです。
このように現代社会おいて「修理する権利」が軽視され、捨て去られようとしているのです。
本書では、この権利を人々が再び取り戻すための具体的な提案が紹介されています。
本書を読んで印象に残ったのは次の一節です。
「修理は、ある程度の独立性と自律性を与えてくれる。受動的な消費者の役割を超えて、より積極的で責任ある人生の参加者になるよう、手助けしてくれるのだ。(p.66)」
修理とは、単に製品の寿命を延ばすだけではなく、自分自身の生き方とも深く関っているのだと知りました。
確かに私自身も故障したパソコンを自力で直した時には、愛着がわくと同時に、誇らしい気持ちになったのを思い出しました。
さらに著者は、地球環境への影響を強調します。
毎年新製品が発売され、古いモノが捨てられる現代の消費サイクルは、環境に大きな負荷を与えています。
修理することは、不要な製品の製造や廃棄物の増加を防ぎ、地球環境にとっても良い選択なのです。
このように本書は「修理する権利」という、本来人間が持っていたはずの権利について深く掘り下げ、それを取り戻す方法を深く考えています。
現代社会に生きる全ての人に読んでほしい一冊です。