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書誌情報
・タイトル:『日本のバス問題 高度成長期の隆盛から経営破綻、再生の時代へ』
・著者:佐藤信之
・出版社:中央公論新社
・レーベル:中公新書
・発売日:2025/9/25
・ページ数:353頁目次
はじめに
第1章 現在のバス業界の問題
第2章 高度経済成長期までのバス事業史
第3章 モータリゼーションの進行―昭和40年代―
第4章 オイルショック後のバス事業―昭和50年代―
第5章 都市バス路線の1980年と現在の比較
第6章 昭和60年代~平成初期―規制緩和以前―
第7章 新自由主義的交通政策と規制緩和
第8章 経営破綻と再建
第9章 これからのバス
終章 路線バスは社会的ベーシックサービスである
感想
ニュースなとを見ていて、最近よく見かけるのが地方の交通問題です。
高齢者による車の事故が多発して、免許返納が推奨されても、それではどうやって暮らしていくのか、そういった問題が全国のたくさんの場所で発生しています。
地方での自動車の代替として最初に挙げられるのがバスです。
・どんな本か
そんなバスの現状を歴史から読み解いたのが本書「日本のバス問題」です。
著者は、交通政策論・日本産業論をご専攻とし、鉄道を中心に交通分野に関する著作を多数著しています。
本書では現代のバス事業の危機について、いくつもの構造的要因がが示されます。
まず指摘されるのが、慢性的な赤字経営で、バス事業は鉄道に比べると小資本で参入しやすい一方、利益の出にくい構造であることが示されます。
加えて深刻なのは、こちらもよくTVで聞く運転士不足です。
人件費が経費の多くを占めているにも関わらず、給与水準が他業種に比べてかなり低く、拘束時間も長く激務。
それらの要因が重なって、運転士の確保が難しいのです。
国としても働き方改革を行いましたが、結果としてバス業界の人手不足はさらに深刻化、全国的な廃止・減便に繋がりました。
では、なぜこのように、現在のバス事業は苦境に陥っているのでしょうか。
著者はその答えを求めて、日本のバス事業を黎明期から高度経済成長期、モータリゼーションを経て、現在に繋がる昭和、平成と詳細に分析していきます。
・どう感じたか
現在のバス問題が「不運」や「怠慢」の結果ではなく、積み重ねられた選択の帰結であるということを強く感じました。
バス運輸のピークは1960年代の末で、そこから乗客数は現代に至るまで減り続けています。
縮小する市場の中で業界を維持するために、はっきり言ってしまえば「迷走」ともいえる試行錯誤をしてきたのがバス事業の歴史なのだと思います。
しかし各時代を生きた人々は決して無為に衰退を受け入れてきたわけではありません。
どうにかしてバスを生かそうと、制度や経営の工夫を重ねてきました。
バスは市場原理に委ねられた民間事業である一方で、人々の生活を支える公共性も担っています。
この曖昧な立場が、その時代ごとの選択を難しいものにしてきたのでしょう。
不採算路線を一方的に閉鎖あるいは値上げしてもいいのか、経営を支えるためにどこまで税金を投入すべきなのか。
バス事業という交通政策には、こういった難しい問題がたくさんあるように思います。
一方で著者は希望も提示してもいます。
本書の中には、バス事業者が経営再建に成功した事例や新しいビジネスモデルで参入したケースが複数紹介され、自動運転やMaaSといった新技術の可能性にも触れられています。
歴史や実例が丁寧に描かれ、バスの未来について読者に問いかける本書の中で、著者が終章で指摘した、「遠い将来は、都市内の路線バスは、ビジネスではなく、公共サービスに転換していくのであろう。」 という言葉はとても示唆に富んでいます。
公共サービスとしてのバスが根付く未来に期待したいと思います。
おすすめの人
・公共交通、インフラ政策に興味のある人
・地方の暮らしや地域問題に興味のある人