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書誌情報
・タイトル:『気象庁 危機と改革の時代を超えて』
・著者:若林悠
・出版社:東京大学出版会
・発売日:2025/12/25
・ページ数:240頁目次
序章 一五〇年目の気象庁―変容する組織と社会
第一章 平成の気象庁に何が起こったのか―危機と改革の時代
第二章 地震業務と火山業務はいかに発展したか―「防災官庁」路線の模索
第三章 政策をいかに評価するか―「防災官庁」路線のディレンマ
第四章 地域といかに連携するか―「防災官庁」路線の深化
第五章 社会といかにかかわるか―前のめる組織と技術の導入
終章 防災気象情報と市民―より良い関係をつくるには
感想
豪雨、台風、地震、火山噴火、と災害が常態化した社会において、気象庁はどのように姿を変えてきたのでしょうか。
本書は、平成から令和にかけての激動期を軸に、気象庁という組織の内側を丁寧に分析した一冊です。
著者は行政学の立場から、気象庁の歩みを単なる技術進歩の歴史としてではなく、「防災官庁」としての役割拡大と組織改革の過程として丹念に検証します。
本書で描き出されるのは、「気象情報」が我々に提供されるまでの、決して平坦ではない取り組みに苦闘する気象庁の姿です。
気象予報士制度の導入、地震・火山情報の高度化、線状降水帯予測への挑戦。
こうした取り組みは華々しい成果のように見えますが、その背後には行政改革の圧力、政策評価の導入、地方自治体や関係機関との連携強化といった制度的・組織的変化が存在します。
気象情報は、社会との関係性の中で意味を持つ「公共サービス」なのです。
とりわけ印象的なのは近年の「前のめり」な気象庁の姿です。
防災官庁化する中で、気象庁は前のめりに政策を進めているというのです。
本書ではその実例として、線状降水帯予測、ウェブ広告問題、生物季節観測を挙げています。
これらを見ていくと、政策だったり、収支改善といった目標が先行して、強引な進め方がなされているように感じました。
それもまた省庁全体を覆う、行政改革の一つの姿なのだと理解できました。
本書は、気象庁を一つの行政組織として捉え直し、公共性のあり方を明確にし、その上でこれから目指すべき指針も示しています。
災害大国日本に生きる我々にとって、気象情報の背景にある制度と思想を知ることは、未来の防災を主体的に考える出発点になります。
本書はその確かな手引きとなるでしょう。
おすすめの人
・防災や災害報道に興味のある人
・気象庁や公共サービスに興味のある人