書籍 科学

『失われゆく我々の内なる地図 空間認知の隠れた役割』

2025年8月19日

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書誌情報

・タイトル:『失われゆく我々の内なる地図 空間認知の隠れた役割』
・著者:マイケル・ボンド(著),竹内和世(訳)
・出版社:白揚社
・発売日:2022/4/11
・定価:3000円+税
・ページ数:361頁

目次

まえがき
第1章 最初のウェイファインダーたち
第2章 うろつきまわる権利
第3章 心の中の地図
第4章 考える空間
第5章 A地点からB地点へ、そして戻る
第6章 あなたはあなたの道を行き、私は私の道を行く
第7章 自然を読む
第8章 道に迷うことの心理学
第9章 都市の感覚
第10章 私はここにいるの?
第11章 道の終わり
謝辞
訳者あとがき
原注

感想

人間に古くから備わってきた「ナビゲーション能力」があります。

それは単に空間を把握する力にとどまらず、脳や心の様々な働きに深く関わっています。

現代社会ではGPS技術の発達により、人はもはや地図を読むことなく、目的地にたどり着くことができるようになりました。

一見便利なこの技術ですが、その利便性は私たち人間が本来持っている「自分の位置を把握し、進むべき方向を見つける力(ウェイファインディング)」の衰退を招いているのではないか?

著者はそのことに危機感を感じて、この本を書きました。

ウェイファインディングの能力が失われることで、単に現実の空間で迷うだけでなく、「自分自身の存在そのものも見失ってしまうこと」が本の中で考察されます。

道に迷うということは、物理的な意味以上に、精神的な迷いや不安、喪失感と深く結びついているのです。

本書では私たちがいかにして道を探し、方向を見つけてきたのか。

その過程と意義を多面的に描き出しながら、「道を見失うこと」の恐ろしさについても詳しく描かれます。

果たして何万年もの間、人類が頼りにしてきたウエイファインディングの力を、私たちは簡単にテクノロジーに明け渡してしまっていいのだろうか?

本書はそんな問いを私たちに投げかけてきます。

ぜひ多くの人に読んでもらいたい本です。

自分自身の「道」を改めて見つめ直すきっかけになることでしょう。『失われゆく我々の内なる地図 空間認知の隠れた役割』

あと一冊

ポイント

内なる地図同様に失われつつあるのが、表題の「道を見つける力」。イヌイットやアボリジニあるはどうやって道に迷わず旅することができるのか。「内なる地図」も「道を見つける力」も実用的な面だけでなく、人の行く末を見つける力になるのではないかと思います。混迷の時代を生き抜くガイドです。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。

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