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書誌情報
・タイトル:『[クリティカル・ワード]ゲームスタディーズ 遊びから文化と社会を考える』
・著者:吉田寛、井上明人、松永伸司、マーティン・ロート(編)
・出版社:フィルムアート社
・レーベル:クリティカル・ワード
・発売日:2025/6/30
・定価:2400円+税
・ページ数:411頁目次
はじめに
第Ⅰ部 理論編-ゲームスタディーズの基礎概念
1 ルール
2 フィクション
3 メディア
4 遊び
5 エンターテインメント
6 ソーシャル
7 インタラクティビティ
8 人口物
第2部 キーワード編-ゲーム文化を理解するための重要なトピック
第3部 ブックガイド編-遊びとゲームを考えるための必読文献
感想
本書は、ゲームという現代文化を人文学的に捉え直し、その学術的研究を体系的に集約した一冊です。
「遊びから文化と社会を考える」、と題された本書の中心にあるのは半世紀近い歴史をもつビデオゲームです。
誕生以来、爆発的に普及したビデオゲームですが、その学術的研究の立ち上がりは決して早くありませんでした。
しかしこの十数年でゲーム批評や分析の方法は大きく進化し、ゲームを研究する総合的な学問分野、ゲームスタディーズが確立されつつあります。
そしてゲームスタディーズの現在地をまとめたのが本書となります。
本書では、第一部「理論編」にて、最も重要な8つのキーワードを考察します。
こちらでは1つのキーワードを3人がそれぞれ記述しているため、より深く理解することができます。
続いて第二部「キーワード編」では、現在ゲームスタディーズでアクチュアルな27のキーワードを取り上げます。
こちらはRTA、ゲーム実況などゲームプレイそのものに関するものや、倫理、歴史叙述など学術的なテーマまで幅広く扱っています。
第三部「ブックガイド編」では、ゲームスタディーズにとって基本となる20の書籍が紹介されています。
ヨハン・ホイジンガ「ホモ・ルーデンス」やイェスパー・ユール「ハーフリアル」など、古典から近年の重要著作までゲーム研究に欠かせない二十冊を丁寧に紹介しています。
こうした構成を通じて、本書は書学者にゲームスタディーズの全体像を提示するだけでなく、分野の理論的背景や現在の議論の最前線に触れる機会を与えてくれます。
学術的な語り口のため、やや難解と感じる読者もいるかもしれませんが、丁寧に学説や論争を追いかける叙述は、他では得難い豊富な情報に満ちています。
ゲームが好きな方には「こんな学術的な世界があるのだ」という発見のために、専門的な研究を志す人のためには研究の最初のステップとして、おすすめしたいです。