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『感情労働の未来 脳はなぜ他者の"見えない心"を推しはかるのか?』

2025年12月7日

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書誌情報

・タイトル:『感情労働の未来 脳はなぜ他他者の"見えない心"を推しはかるのか?』
・著者:恩蔵絢子
・出版社:河出書房新社
・発売日:2025/10/17
・ページ数:238頁

目次

はじめに 感情労働に疲れきった人たちへ
1 感情を脳科学から考える
2 感情労働のはじまり
3 脳はどのようにして人の心を理解するのか?
4 脳の進化と感情労働
5 SNSは、感情労働の最前線?
6 未来の感情労働
おわりに 感情労働の豊かな可能性
あとがき

感想

近年、カスタマーハラスメントの問題などから「感情労働」という言葉に注目が集まっています。

「感情労働」とは、仕事の中で自分の感情をコントロールし、求められる表情・態度・言葉遣いを演じることで他社に働きかける労働のことです。

接客や医療・教育などの領域が典型で、企業が人間の感情を資源として扱うことで生じる搾取の問題が指摘されてきました。

この概念は、1983年にアメリカの社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールドが自著「管理される心―感情が商品になるとき」の中で提唱したことで広がりました。

そうした背景のもと、本書「感情労働の未来」は、この概念を脳科学の視点から捉え直そうとする意欲的な一冊です。

著者は、先に挙げた接客や、医療介護、教育などと浮く艇の領域だけが感情労働を必要とするのではなく、他者と関わるあらゆる場面で人は感情を用いて行動していると指摘します。

つまり、私たちは日常的に感情労働に従事しており、このテーマは決して一部の人の問題ではないということです。

さらに本書では、人間の脳と人工知能(AI)について頻繁に言及されています。

AIの発展によって「言葉を操ること」が人間固有の能力ではなくなりつつある今、むしろ感情という領域に注目する必要性が示されています。

さらに、SNSでは言語と身体が切り離され、人間が大規模言語モデルのように相手を言葉だけで理解しようとする苦しさを指摘します。

読んでみると、いずれもハッとさせられる指摘であり、家庭でも仕事でもSNSでも思い当たることがあります。

一方で感情を搾取の文脈だけで語るのではなく、その豊かな可能性にも目を向ける本書は、働き方や人間関係を考えるための手がかりに満ちています。

タイトルから推測されるような「感情労働の現状」や労働論を語る本ではありませんが、脳科学という視点を持ち込むことで人間関係全般の今を語る書となっています。

感情とどのように向き合い、どのように社会と関わるか、現代の息苦しさの解消にヒントをくれる本です。

おすすめの人

・感情労働に関わる全ての働く人
・子育てをする人
・AIやSNSの課題に興味のある人

あと一冊

ポイント

2018年に原著が発売された、著者の話題の書。本書の中でも時々言及されている、著者と認知症の母の生活を描いた書です。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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