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『名水と日本人 起源から百名水まで、文化と科学でひもとく』

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書誌情報

・タイトル:『名水と日本人 起源から百名水まで、文化と科学でひもとく』
・著者:鈴木康久、河野忠(著)
・出版社:中央公論新社
・レーベル:中公新書
・発売日:2025/9/19
・ページ数:256頁

目次

はじめに
序章 時代が求めた名水の変遷
第一章 『古事記』『日本書紀』『風土記』が伝える本
第二章 日本人の心情を伝える和歌の名水―奈良時代~平安時代
第三章 人物ゆかりの水と宗教の水―平安時代~室町時代
第四章 新たな水文化、茶人・茶事の水―室町時代~江戸時代
第五章 民衆の水―江戸時代の名水
第六章 生業の水―明治時代~現代
第七章 水質が生み出した名水
第八章 自然環境と共存する巧みな水利用
終章 名水の名付けの「謎をひもとく」
あとがき
参考文献
平成の名水百選リスト
昭和の名水百選リスト
名水一覧

感想

本書は、日本各地にある名水と日本人の繋がりを歴史と科学の両面から紐解いていく本です。

「各地を訪れると、湧水や井戸など、人々が昔から大切に考え、守ってきた水には特別な名前が付けられているのが多いことに気づいた。」

著者はこの発見をきっかけに、名水を探究する旅に出ました。

本書の基本的な立場は、名水を単なる自然現象として扱うのではなく、文化という文脈の中で理解しようとする点にあります。

記紀などに見える神話の水、和歌に詠まれた名所の水、宗教者や武将にまつわる霊験あらたかな水、茶や酒の品質を左右する実用的な水、さらには近代以降の名水百選に至るまで、名水の意味は時代ごとに少しずつ変化してきました。

本書ではその歴史を丹念にたどっていきます。

著者は名水の由来の多様さから、日本人の心のありようを浮かび上がらせます。

そこに見えるのは、神明なるものへの畏れであり、願いを叶えたいという祈りであり、よりよい産物を生み出そうとする職人の思いだったり、様々です。

そこにある心のありようは今と変わらないのだと感じました。

一方、水質の分析に関する章も設けられており、名水を科学的に検証する試みもなされています。

たとえば、「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」という茶摘み唄があります。

ここに唄われる各地の水質を調べると、香りのみ実験はできませんでしたが、色と味についてはそれに見合う結果が得られたそうです。

名水とは、決して根拠の曖昧なものではなく、先人たちの味覚や経験則に裏打ちされた評価でもあったのですね。 

水はどこでもある存在ですが、その中から特別な水を見つけ出し、大切に守り、名前を与えてきた歴史を知ることで、日本人の自然観や心性が見えてきます。

文化史と自然科学の両面から名水を読み解く本書は、日本という土地と人との関係を考えるうえで興味深い一冊でした。

おすすめの人

・日本文化、歴史、民俗に興味のある人
・地理や水に興味のある人
・旅、名所巡り、神社仏閣が好きな人

あと一冊

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ポイント

中国から伝わった風水が日本でどのように受容されたかを、学術的に研究した本です。その中で日本人が特に「水」を重視したことが繰り返し語られ、いかに日本の文化が水と共にあったかがよくわかる一冊です。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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