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書誌情報
・タイトル:『そこに工場があるかぎり』
・著者:小川洋子
・出版社:集英社
・レーベル:秀恵社文庫
・発売日:2021/1/26
・定価:1400円+税
・ページ数:208頁目次
細穴の奥は深い
お菓子と秘密
丘の上でボートを作る
手の体温を伝える
瞬間の想像力
身を削り奉仕する
あとがき
この本で訪れた工場
感想
作家の小川洋子さんによる工場見学のエッセイです。
最近、文庫版が刊行されましたが、私は最初に出版されたハードカバー版で読みました。
小川さんのやさしくかわいらしい姿が描かれた、素敵な装丁の本です。
さて、内容はというと小川洋子さんが6つの工場を実際に訪れた体験を綴ったものです。
訪問先の内訳は、「金属加工(大阪)、お菓子(神戸)、ボート(滋賀)、乳母車(東京)、ガラス加工(京都)、鉛筆(東京)」(p.190)と多彩です。
それぞれの規模も様々で、小さな町工場があれば、大規模な製造ラインを持つ工場もあります。
それぞれに「物語」があり、「職人」がいて、輝く「技術」がある。
読んでいて全く飽きない本です。
小川さんの視点は本当に独特で、一般的に無機質なイメージのある工場も、小川さんの文章の中ではきらきら輝いています。
そして結局はモノを創り出すのは「人」なのだなと感じさせられます。
「今も世界のどこかで、誰かが何かを作っている。この想像が、どれほど私の救いになっているか知れません。いくら感謝しても、しきれない気持ちです。」(p.202)、という言葉が印象に残りました。
エッセイの名手が案内してくれる、おとなの社会科見学。
ものづくりの裏側にある、人の息遣いに触れたい方はぜひ読んでみてください。