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『紋章のヨーロッパ史』

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書誌情報

・タイトル:『紋章のヨーロッパ史』
・著者:浜本隆志
・出版社:KADOKAWA
・レーベル:角川ソフィア文庫
・発売日:2025/11/25
・ページ数:266頁

目次

序章 生きている紋章
第一章 紋章の起源と略史
第二章 紋章学入門
第三章 主要シンボル・モティーフの由来と変遷
第四章 紋章と旗のヨーロッパ史
第五章 近代社会の中で揺らぐ紋章
第六章 共同体とシンボル標章
第七章 差別とシンボル
終章 タテ社会とヨコ社会のシンボル標章
あとがき

感想

おすすめの人

ヨーロッパの歴史を知る上で無視できないのが紋章です。

紋章というと中世の騎士が所持し、城門や鎧に描かれているようなイメージがあります。

しかし今でも、街や店や商品のラベルなどで使われているくらいヨーロッパでは身近で、現代まで息づいているものなのだそうです。

日本人にとっては、家紋と同じように見えますが、本書によると、日本では代々同じ家紋が比較的シンプルなデザインで継承されたのに対して、ヨーロッパの紋章は個々人を識別するための分割・合成を繰り返したことで複雑、とそれぞれ違いがあります。

本書は、欧州の紋章が単なる家の印ではなく、ヨーロッパ社会を映し出す制度であったということを明らかにします。

著者はまず、騎士の盾に描かれた標識としての起源や、色彩や図像の基本ルールなど、紋章学の基礎を丁寧に解説します。

最低限の知識を押さえながら、紋章がどのように王権や封建秩序、都市共同体と結びついていったのかを理解できます。

中世盛期以降、紋章は貴族だけでなく、都市やギルドなど多様な階層の人々に広がり、それぞれの名誉や連帯を象徴する標識となりました。

しかし同時に、紋章や標章は排除の道具にもなりえました。

特定の印を付されることで、被差別民や周縁化された職業の人々が可視化されることもあったのです。

著者は名誉と差別が同じ紋章で表現される、ヨーロッパ社会の光と影を示します。

紋章は、社会の秩序や価値観を一目で伝える視覚言語で、その機能は形を変えながら、今日にも受け継がれています。

紋章を通じて、ヨーロッパ社会の本質を教えてくれる本書は、ヨーロッパ史に興味のある方におすすめです。

あと一冊

ポイント

本書は紋章がテーマでしたが、同じように個人を識別する機能を持つのが「あだ名」です。中世ヨーロッパ史を見ていると、「肥満王」や「禿頭王」などひどいものから、「獅子心王」「尊厳王」などかっこいいものまで様々なあだ名を見かけます。そんなあだ名が中世ヨーロッパ史にとってなんなのかを読み解く書です。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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