※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
書誌情報
タイトル:〈ロシア〉が変えた江戸時代 世界認識の転換と近代の序章
著者:岩﨑奈緒子
出版社:吉川弘文館
レーベル:歴史文化ライブラリー
発売日:2024/12/1
定価:1700円+税
ページ数:241頁
目次
福沢諭吉の文明観の起源―プロローグ
世界を学ぶ
日本の北辺で何が?
ロシアの「出現」
世界研究のはじまり
ヨーロッパとは何か
ヨーロッパと対峙する
初めての対ロシア外交
幕府、蝦夷地を囲い込む
「鎖国」外交の成立
ヨーロッパを受容し、ヨーロッパに対抗する
司馬江漢と本多利明
つながる世界と日本の自画像
「科学」と「技術」の獲得に向けて
将軍への忠義の行く先―エピローグ
あとがき
感想
様々な問題を抱えながらも、江戸幕府の主導で海外との関わりを避ける体制を維持してきた日本。
そんな中、18世紀後半になって突如大きな存在感をもって現れたのがロシアでした。
これまでの日本にとっては南西から現れるものだったヨーロッパの国がいきなり北に現れたインパクトは大きかったのです。
それは国内に強い衝撃を与え、多くの人々や学問に影響を及ぼしていきます。
その反応や変化の流れが、やがて歴史的転換へつながる大きな潮流となっていきました。
本書は、そうした激動の時代における「世界」との出会い、ロシアとの関係を手掛かりに日本人の世界観の変化を丹念に読み解いた一冊です。
なかでも注目すべきは、「ヨーロッパを進んだ文明とみなす世界観のはじまりは、一八世紀から一九世紀への世紀の転換期にさかのぼる」との視点です。
著者は、当時の出来事や人物を取り上げながら、その認識がどのように生まれ、広がっていったかを考察します。
日本史の教科書などでは、日本人は突然ペリーが黒船で来航したから「世界」を知り、開国したかのように理解しがちです。
しかし本書を読むと、それより以前から多くの人が「世界」の認識をもって動いていたことがわかります。
その最初のきっかけとなったのが、まさにロシアの出現でした。
18世紀後半は、大河ドラマ「べらぼう」で描かれるような文化の爛熟期であると同時に、海外からの見えない外圧を感じる時代でもありました。
そのような状況は今の日本にも重なる部分があるように思います。
日本がどのように「世界」を認識し、それが後の時代にどのようにつながっていくか。
そうしたテーマに関心のある方におすすめです。