※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
書誌情報
・タイトル:『料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える』
・著者:石川伸一
・出版社:化学同人
・レーベル:DOJIN文庫
・発売日:2021/7/30
・ページ数:226頁目次
文庫版によせて
はじめに
第1章 「料理と科学の出会い」の歴史
第2章 「料理をおいしく感じる」の科学
第3章 「おいしい料理」の科学
第4章 「おいしい料理をつくる」の科学
第5章 「おいしすぎる料理」の科学
おわりに
文庫版あとがき
感想
本書は、「調理に関する現象を分子レベルで理解するサイエンス(分子調理学)と、分子レベルに基づいた新しい料理をつくるテクノロジー(分子調理法)(p237より)」を解説した書となります。
著者は、「分子レベルの食品学と栄養学」(p235より)」をご専門とされ、食の世界を科学的に読み解く研究者です。
そんな著者が、「料理と科学の出会い」から、「料理をおいしく感じる」「おいしい料理」「おいしい料理をつくる」「おいしすぎる料理」を分子の視点から考えていくことが本書の狙いです。
本書を通して読むと、「食とはまさに科学なのだ」と実感させられます。
例えば、日本人が毎日ごはんを食べても飽きないことへの仮説です。
同じ穂から採取された米粒でも、穂先と根元ではタンパク質やアミロースの含量、ミネラル成分の分布図に違いがあり、それぞれ味や噛みごたえが違うんだそうです。
つまり一つの茶碗に入っているご飯粒はバラバラで、だからこそ毎日味に違いがでて、飽きないのではないかというのです。
また著者は、人が「おいしい」と感じるのは舌の上の現象だけに限られないことを示します。
「食べもの側の要因」については、味覚だけではなく、五感全て=「脳」がどう感じるかが重要ですが、それだけではないのです。
食べる人の空腹具合や健康状態、メンタルなど「食べる人側の要因」も考えなくてはいけないと著者は指摘します。
そのため、本書ではおいしい料理やそれを作るものだけではなく、「食べる人」すらも分子的に分析します。
本書では、食にまつわる全てのことが分子レベルで解説されますが、比喩や実験的な説明を交えて、誰でも理解できる語り口になっています。
全体として本書は、「料理を科学する」ことの楽しさと奥深さを伝える好著です。
調理の背後にある科学的現象を知ることで、いつもの台所が少し違って見えてくる。
科学好きにも料理好きにもすすめられる、知的好奇心をくすぐる一冊です。
おすすめの人
・日常に根ざした科学が好きな方
・料理を科学的に突き止めたい方