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書誌情報
・タイトル:『中国TikTok民俗学 スマホからはじまる珍神探訪』
・著者:大谷亨
・出版社:NHK出版
・レーベル:NHK出版新書
・発売日:2025/12/10
・ページ数:320頁目次
はじめに
フィールドワークのしおり
第一章 逆立ち張五郎を探せ!
第二章 張五郎にチラつく鬼の形相
第三章 セクシー九尾狐に魅入られて
第四章 タイの神秘とセクシー九尾狐
第五章 大黒天の逆輸入
第六章 お盆フェスの聖と俗
第七章 闇に惹かれる人々、増殖する無常
第八章 中原に花咲く無常信仰
おわりに
感想
今や多くの人に普及したスマホを開くと、無数の短い動画が絶え間なく流れてきます。
一見流行のものや娯楽的なものばかりに見えるそれらの映像も、よく見れば、中国各地で今も息づく信仰の現場が映し出されていることを本書は教えてくれます。
『中国TikTok民俗学』は、著者がスマホを片手に現代中国の信仰世界へと分け入っていく刺激的な書です。
氏は、中国版TikTok「抖音 」で見つけた「珍神」の動画に心を動かされると、すぐさま投稿者に連絡を取り、現地へ飛びます。
セクシーな九尾狐、逆立ちする張五郎像、各地で展開する無常信仰。
彼らの起源を追いかけて中国を南に北に、果てはタイやマレーシアまでたどり着きます。
画面越しには奇異に見えるこれらの事物も、現場に立てば地域社会の歴史や人々の祈りと結びついた、生々しい信仰の姿なのだとわかります。
デジタル空間で見つけた断片を、足で稼ぐフィールドワークによって厚みのある物語へと組み立てていく。
その著者の熱意と行動力がこの本をただのルポではなく、学問的なものへと押し上げています。
本書の魅力は、中国の信仰世界のダイナミズムを、現在進行形の動きとして捉えている点にあります。
現代中国の新しい信仰は伝統の深層から現れたり、あるいは突如海外から輸入されたれ、SNSによって拡散し、再解釈され、時に爆発的に拡散します。
しかし拡散しているのが新しい技術だとしても、その根源には誰かの「思い」があります。
生活に苦しみ、事業が行き詰まり、悩み、家族の安寧を祈る等身大の生活者。
そういった人々が、今もなお中国を宗教大国たらしめています。
「デジタル時代の民俗学」という棚にふさわしい本書は、私たちが日常的に行うスワイプを新しい探検へと変え、画面の奥でうごめく神々の躍動を感じさせる、知的興奮に満ちた一冊です。
おすすめの人
・民間信仰、神仏妖怪に興味のある人
・現代中国を知りたい人
・デジタル文化と社会の関係を知りたい人