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書誌情報
・タイトル:『ローマ教皇 伝統と革新のダイナミズム』
・著者:山本芳久
・出版社:文芸春秋
・レーベル:文春新書
・発売日:2025/8/20
・定価:1050円+税
・ページ数:256頁目次
はじめに
第一章 SNS時代の教皇
第二章 教皇フランシスコからレオ十四世へ
第三章 教皇フランシスコー「橋を架ける」―
第四章 レオ十四世―「落ち着かない心」―
第五章 ベネディクト十六世―信仰・希望・愛―
あとがき
感想
2025年4月21日、ローマ教皇フランシスコが逝去し、コンクラーベを経て、アメリカ出身のレオ十四世が新たに教皇として即位しました。
同時期にはまさにこのコンクラーベを題材にした映画「教皇選挙」が日本で公開されており、我が国でもローマ教皇への注目がかつてなく高まりました。
そんな中、本書が出版されました。
著者の山本芳久氏は特にトマス・アクィナスをご専門とされる神学者で、多数の著作を通じてキリスト教や神学を紹介してきました。
本書の特徴は、ローマ教皇という存在を歴史や制度ではなく、神学的な面からアプローチしていることです。
一般向けの本では、例えばローマ教皇の発祥や教皇領の歴史を語ること、教皇庁の仕組みなどを解説することが多い印象です。
しかし教皇の教えをしっかりと神学面から読み解いて、わかりやすく教皇の考えを一般の私たちに知らしめる本はあまりないのではないでしょうか。
しかも本書では教皇という一括りではなく、ベネディクト十六世・フランシスコ・レオ十四世と同時代の教皇たちの教えをそれぞれ解説しています。
ベネディクト十六世の「信仰・希望・愛」、フランシスコの「橋をかける」、そしてレオ十四世の「落ち着かない心」。
それぞれを検討することにより、教皇が遠くにある存在ではなく、私たちと同時代・同じ空間に存在する「人」としての一面が明らかになっています。
これも本書の大きな特徴といっていいのではないでしょうか。
また本書では、現代でも教皇の教えがアウグスティヌスやトマス・アクィナスなど伝統的な神学に基づいていることが示されます。
一方、現代のニュースなどではどうしても教皇の政治的な面のみがクローズアップされてしまうことが本書でも指摘されています。
しかし、やはりローマ教皇はカトリックという宗教のトップであり、宗教者であるということが本書を読むとわかります。
日本におけるカトリック信徒の数は全人口の0.34%に過ぎず、多くの人にとって教皇は縁遠い存在かもしれません。
しかし本書は教皇の思想を現代に結び付けて紹介することで、その存在を身近に感じさせてくれます。
教会史や神学に詳しくなくても読みやすい本なので、ローマ教皇と世界の接点を考えたい方に勧めたい本です。