※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
書誌情報
・タイトル:『音でデザインする 「緊急地震速報音」は、なぜ緊張するのか?』
・著者:小久保隆
・出版社:講談社
・レーベル:講談社選書メチエ
・発売日:2026/2/12
・ページ数:208頁目次
第1章 「緊急地震速報音」を聞くとなぜ緊張するのか?
第2章 電車の発射音から、人は何を受け取っているのか? 「社会の音」の作り方
第3章 流す音楽で客層を変えられるのか? 音の力のいろいろ
第4章 波の音に癒されるのはなぜか? 「1/fゆらぎ」の正体
第5章 「六本木ヒルズの音」とは何か? 音による空間デザイン①
第6章 「横浜市」の音ってどんな音? 音による空間デザイン②
第7章 音と映像が造る社会の未来
おわりに 必要な音、不要な音とは何か
感想
本書は、人の行動や感情を動かす「音」が、どのような考え方で設計されているのかを解説した一冊です。
著者は環境音楽家・音環境デザイナーとして長年にわたり、公共空間や企業、製品の音づくりに携わってきました。誰もが一度は耳にしたことのある「緊急地震速報音」や電子マネー「iD」の決済音などは、著者が手がけた代表的な仕事です。また、環境音楽家として数多くの作品を発表する一方、日本のシンセサイザー黎明期から活躍してきた人物でもあります。
本書では、私たちが普段何気なく耳にしている音が、どのような目的を持ってデザインされているのかを、多くの事例を通して紹介します。
例えば、緊急地震速報音は「危険を一瞬で伝える」という目的のため、前例のないところから試行錯誤を重ねて制作されました。また、駅で流れる発車メロディや商業施設のBGM、企業のサウンドロゴなども、それぞれ利用者の心理や行動を考えながら設計されています。さらに、波や風、鳥のさえずりといった自然音が人に安らぎを与える理由についても取り上げられ、音と人間との関係が幅広い視点から解説されます。
本書の特徴は、「音」を芸術作品としてではなく、社会を支えるデザインとして捉えている点にあります。著者は「アートは無責任、デザインは有責任」という考え方を示し、音には必ず役割があり、その役割を果たして初めて良いデザインになると語ります。この視点は、音響だけでなく、建築やプロダクトデザイン、Webデザインなどにも通じる考え方といえるでしょう。
また、本書にはQRコードが掲載されており、紹介される音の多くを実際に聴きながら読み進めることができます。文章だけでは伝わりにくい音の違いを体験できるため、理解が深まりやすい構成になっています。
「音」は普段あまり意識されることのない存在ですが、実際には私たちの感情や行動、空間の印象に大きな影響を与えています。本書は、その見えないデザインの世界を豊富な実例とともに案内してくれる入門書です。
おすすめの人
・音楽や音響に関心のある人
・人と環境の関係に興味のある人