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『「再征服」は、なぜ八百年かかったのか レコンキスタ』

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書誌情報

・タイトル:『「再征服」は、なぜ八百年かかったのか レコンキスタ』
・著者:黒田祐我
・出版社:NHK出版
・レーベル:世界史のリテラシー
・発売日:2025/11/25
・ページ数:178頁

目次

はじめに
第一章 事件の全容
 キリスト教諸国は、アンダルス勢力をいかに対峙したのか?
第二章 事件の政治的・社会的・宗教的背景
 完遂までに、なぜ八百年を要したのか?
第三章 同時代へのインパクト
 なぜ、「太陽の沈まぬ国」が誕生したのか?
第四章 後世に与えた影響
 異なる文明の接触は、スペインに何をもたらしたのか?
おわりに

感想

711年、長らくイベリア半島を支配してきた西ゴート王国が滅亡しました。

滅ぼしたのはウマイヤ朝。

ムハンマドの創始以来、凄まじい勢いで版図を拡大してきたイスラム教徒の勢力です。

この結果、イベリア半島は大半をはイスラム教徒の支配下に入り、キリスト教勢力は北部のわずかな地域に押し込められました。

領土の大半を失ったキリスト教勢力ですが、なんとか持ちこたえ、やがて反撃に転じます。

そして約800年という長い時間をかけて、徐々にイベリア半島を取り戻していきました。

この動きを世界史では、「レコンキスタ」、日本語では一般に「国土回復運動」と呼びます。

1492年、カトリック両王が最後のイスラム勢力を打倒したことでイベリア半島を取り戻し、レコンキスタは完遂されます。

本書の提示する疑問は、「レコンキスタはなぜ八百年かかったのか?」です。

八百年とはだいぶ長い期間です。

途中で諦めてしまってもおかしくありませんし、一方でなぜ八百年で達成できたのかも疑問と言えます。

著者が強調するのは、その背景にあるレコンキスタの内実がかなり複雑だということです。

私たちは、キリスト教世界とイスラム世界が宗教対立のもとで戦い続けた、という単純な図式でレコンキスタを理解しがちです。
しかし本書が描き出すのは、そのような一直線の「聖戦」ではありません。

レコンキスタの過程では、キリスト教勢力同士が争い、イスラム勢力と同盟を結ぶこともありましたし、逆もまた起こりました。

領土の拡大も宗教的使命だけではなく、王権の強化、貴族層の利害、農地開発といった現実的な要因と密接に結びついていました。

また両勢力の軍事力が拮抗していて決定的な一撃をお互いに与えられなかったことや、マグリブ勢力や十字軍思想といった外部要因の介入なども長期間化の重要な要因でした。

戦争と平和、征服と共存が断続的に繰り返され、その結果として「八百年」という時間が形作られたのです。

さらに本書は、イスラム支配下のイベリア半島が高度な文化と知の交流の場であったことも強調します。

学問、技術、文化は宗教の壁を越えて伝播し、後のヨーロッパ世界に大きな影響を与えました。

レコンキスタは破壊の歴史であると同時に、文明が交錯する接触史でもあったのです。

1492年のグラナダ陥落は、単なる「奪還の終点」ではありません。

それは同時にスペインの近世の始まりでもありました。

著者はこの点にも言及します。

中世では比較的キリスト教勢力と共存することの多かったイスラム教徒やユダヤ教徒でしたが、これ以降急速に弾圧と追放の対象となっていきます。

また、コロンブスの新大陸到達に象徴される大航海時代の到来によって、イベリア半島内部のみに向いていた視線が、新世界へと向けられていきます。

こうしてスペインは新しい時代へと突入していきました。

「世界史のリテラシー」シリーズに共通していることですが、本書も平易な語りながら、とても充実した内容でレコンキスタの本質を的確に理解できる内容となっています。

中世スペイン史の重要概念であるレコンキスタの格好の入門書として読まれ続けていくべき書です。

この単純な対立史ではない、奥行きのあるレコンキスタの歴史を味わってみてください。

おすすめの人

・スペイン史、中世史に興味のある人

あと一冊

ポイント

本書の続き、近世のスペインと大航海時代について描いた書です。トルデシリャス条約はなぜ成立し、どのような影響を与えたかを考えます。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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