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『考察する若者たち』

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書誌情報

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・タイトル:『考察する若者たち』
・著者:三宅香帆
・出版社:PHP研究所
・レーベル:PHP新書
・発売日:2025/11/18
・ページ数:248頁

目次

まえがき 若者が考察動画を検索する理由
第1章:批評から考察へ 『あなたの番です』『変な家』『君たちはどう生きるか』
第2章:萌えから推しへ 『【推しの子】』『アイドル』『絶対アイドル辞めないで』
第3章:ループものから転生ものへ 『転生したらスライムだった件』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
第4章:自己啓発から陰謀論へ 堀江貴文『多動力』、ひろゆき『1%の努力』
第5章:やりがいから成長へ 『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』『働きマン』
第6章:メディアからプラットフォームへ 『スマホ脳』『一般意志2.0』
第7章:ヒエラルキーから界隈へ 『スキップとローファー』『違国日記』
第8章:ググるからジピるへ ChatGPT、『NEXUS』『わたしを離さないで』
第9章:自分らしさから生きづらさへ 『世界に一つだけの花』『世界99』、MBTI
終章:最適化に抗う そして『スキップとローファー』『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』
あとがき やりたいことや自分だけの感想を見つけるコツ
参考文献 「考察の時代」を理解するための本

感想

――「報われたい」若者たちの感情を読み解く一冊

この10年間、YouTubeなどを観ていると「考察」という言葉をよく見かけます。

分かりやすいのは、何かしらの漫画やゲーム、アニメについての「考察動画」です。

新刊が出たり、今週の放映があるとたくさんの人がそれぞれの考察を述べているようです。

昔からそういった考察はありました。

私も若い頃は、エヴァンゲリオンを観てそんなことをしたりもしていました。

しかし今の若者の考察に対する熱量とは何かが違うのではないか?

そんな疑問を持った時に、いま話題の著者・三宅香帆さんがまさに「考察する若者たち」という本を上梓されたので手に取ってみました。

本書によると「考察」は若者の間に拡がり、今や定着しているそうです。

そして、その根底には「報われたい」という気持ちがあるのだと、著者は指摘します。

本書では、「考察」が単なる娯楽やオタク文化の延長としてではなく、現代の若者がおかれた社会状況と強く結びついている点を掘り下げています。

現代において、コンテンツは膨大になり、人々の可処分所得は常に削り取られています。 

かつての私たちが物語に求めたのは、答えのない問いに向き合う「批評」的な体験でした。

そこには正解などなく、むしろ曖昧さの中にこそ豊かさがあるように感じていました。

一方で、「当たった・外れた」が分かる「考察」は達成感を得やすい。 

作品を「消費」するだけでなく、明確なゴールのある「考察」を行うことで、費やした時間を無駄にしたくない、正解にたどり着くことで報われたい。

その感覚は、作品鑑賞にとどまらず、仕事や自己実現のあり方にも通じているように感じられます。

著者は、この現象を否定的に切り捨てるのではなく、社会構造の変化から丁寧に紐解いていきます。

SNSでの連帯や承認欲求、タイパ重視の風潮。

それらが複雑に絡み合い、若者たちは「正解にたどり着く快感」を共有することでつながっているのです。

答えのない「批評」を目指すより、ゴールのある「考察」を行い、報われたい。

それが平成ではない令和特有の雰囲気なのだと気付かされました。

本書のおかげで、私の疑問はかなり解消され、今の若者も大変なんだなと、実感しました。

彼らは「考察」を楽しんでるけど、決して楽しいだけではないことが本書から感じられました。

そんな彼らにも、終章で著者が訴えかけることが伝わったらいいなと思います。

同時に、自分も忙しさに追われる中で最適化された選択ばかりになっていないか心配になりました。

自分の感性を信じてモノを選ぶことを、改めて意識したいと思います。

おすすめの人

・若者文化やZ世代の価値観を知りたい人
・「楽しむこと」を見直したい人
・エンタメ業界やマーケティングに携わる人

あと一冊

ポイント

本書の中でも紹介された一冊で、衝撃的なタイトルの本です。今の若者たちは、たくさんの人が見ている前で褒められるのを嫌がるのだというのです。それはどういうことなのでしょうか?

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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