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書誌情報
・タイトル:『北極海 世界争奪戦が始まった』
・著者:石原敬浩
・出版社:PHP研究所
・レーベル:PHP新書
・発売日:2023/5/15
・ページ数:220頁目次
はじめに
第1章 地球温暖化で開かれる北極海
第2章 北極海をめぐる対立の歴史
第3章 ロシアと北極、プーチン大統領
第4章 中国「氷上シルクロード」の野望と米国の反発
第5章 協調可能性と課題:国際制度
第6章 日本と北極
おわりに
感想
このところ、グリーンランドに注目が集まっています。
トランプ大統領が米国による所有に意欲を示しており、軍事に頼ることもチラつかせながら取得を模索しています。
なぜそこまでしてグリーンランドを欲するのでしょうか?
その大きな要因の一つが「北極海」と考えられます。
そんな北極海について知るため、手に取ったのが本書です。
本書では覇権の係争地となりつつある北極海の現状を、政治的・軍事的に解説しています。
本書が描き出すのは、覇権の係争地となりつつある北極海の現在です。
これまで「氷に閉ざされた辺境」と見なされてきたこの海域は、地球温暖化という予想外の要因によって、一気に世界の注目を浴びる戦略空間へと変貌しました。
北極は南極と違い、大陸ではなく海に浮かぶ氷の世界です。
その氷が急速に減少したことで、これまで封じられていた利権が次々と姿を現しています。
その一つが資源です。
北極海周辺には豊富な石油・天然ガスが眠っているとされてきましたが、過酷な環境ゆえに長らくは開発は採算に合いませんでした。
しかし温暖化によって条件が緩和され、徐々に現実的な選択肢となってきています。
特にロシア、中国は熱心にこの資源に取り組んでいるようです。
また今後、さらに氷が溶けていった場合に重要になるのが航路です。
アジアからヨーロッパへ船で輸送する場合、現在はスエズ運河を通る南回りコースが一般的ですが、北極海を通るコースが実現すると、距離を3割ほど減らすことができる可能性があります。
しかもスエズ運河ルートと違って海賊の心配もいらないこともメリットです。
こう考えると北極海はもはや単なる寒冷地ではなく、世界経済の動脈となりうる可能性を持っていることがわかります。
さらに北極海は氷が溶けだす前から、冷戦の重要なエリアでした。
メルカトル図法の地図だとわかりにくいのですが、ソ連からアメリカ本土にミサイルを打つ場合、実は北極海を通るルートが最短なのです。
そのため、冷戦期には北極海こそが最前線でした。
上空には常に警戒する軍機が飛び回り、水面下には核兵器を積んだ潜水艦が待機している、緊張の海だったのです。
本書はその歴史的文脈を踏まえながら、現在の米露中の動きを丁寧に検証しています。
こうした背景を知ると、トランプ大統領のグリーンランド発言も、突飛な思い付きではなく、北極海をめぐる長期的な地政学の流れの延長線上にあることが見えてきます。
本書は、ニュースの断片だけでは理解しにくい「北極海の争奪戦」を、一冊俯瞰できる良書です。
世界の勢力図が、静かにしかし確実に塗り替えつつある。
その現実を実感させてくれる一冊です
おすすめの人
・国際政治、安全保障に興味のある人
・地球温暖化の影響に興味のある人