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書誌情報
・タイトル:『未来政府 プラットフォーム民主主義』
・著者:ギャビン・ニューサム、リサ・ディッキー(著),稲継裕昭(監訳),町田敦夫(訳)
・出版社:東洋経済新報社
・発売日:2016/9/30
・ページ数:343頁目次
序章 市民との関係を取り戻す
第1章 なぜここまで溝は広がったか
第2章 その壁を打ち壊せ!
第3章 ガラス張りの家に住む
第4章 役所の仕事はすべてアプリで
第5章 プラットフォームとしての政府
第6章 民主主義のためのゲーム
第7章 政府版イェルプ
第8章 人民による、人民のための投票
第9章 小さなダビデの大群
第10章 構えろ、撃て、狙え
第11章 ポスト党派政治の時代
謝辞
監訳者あとがき
感想
トランプ大統領の躍進が続くアメリカ共和党に対し、民主党は長く苦戦を強いられてきました。
そんな中で次の希望の星として名前が挙がるのが、本書の著者、ギャビン・ニューサム氏です。
現在はカリフォルニア州知事として活躍していますが、大統領選への出馬もたびたび噂される人物です。
本書は、彼が副知事時代に著したもので、ニューサム氏の行政観や政治哲学が率直な言葉で語られています。
本書で印象的なのは、現代の政治を「自動販売機」にたとえる視点です。
お金を入れれば欲しいものが出てきて、気に入らなければ機械を揺さぶる。
市民が政府に向ける態度も、いつの間にかそれと同じになってしまったのではないか、と彼は問いかけます。
しかしニューサム氏は言います。
「政府とは無形の邪悪な彼らではない。政府とは私たちだ」と。
政治を“外注”する感覚から脱し、市民自身が主体になる必要があるのだと。
彼が提示する解決策の中心にあるのが、「プラットフォームとしての政府」という発想です。
開かれたAPIを通じて行政サービスや情報が共有され、市民が受け身ではなく、参加者として関わる政治。
ゲーミフィケーションを取り入れたり、透明性を徹底し、データを最大限活用する。
特に印象深いのは、「テクノロジーが政府を強化するのではない。テクノロジーは政府の本質を変える」という一節です。
政府は問題を解決する存在ではなく、管理する存在に堕してしまっているのではないか。
だからこそ、政治家や官僚にすべてを任せる発想から脱却し、市民一人ひとりがリーダーになる時代を構想する必要がある。
投票箱の中だけでなく、日常のあらゆる場所から政治が始まる、そんな未来像が本書には描かれています。
読み進めるほどに、自治体行政が「面倒で退屈なもの」から、「関わることで社会が動くワクワクするもの」へと変わっていくイメージが広がります。
しかも、この構想を語っているのが、机上の空論ではなく、現職の政治家であるという点に説得力があります。
理想論にとどまらず、実装を前提にしたビジョンであることが、本書の最大の魅力でしょう。
もっとも、本書の原著が刊行された2013年は、WEB2.0の熱狂がまだ残る時代でした。
テクノロジーは希望の象徴であり、民主主義を必ず良くするものだという楽観がありました。
しかし現在、私たちはSNSによる分断や、プラットフォーム企業の独占に直面しています。
そんな時代に、この前向きな提案がどこまで実現できるのか。
そこには、どうしても一抹の不安も残ります。
それでもなお、本書が描く「参加型の政治」のビジョンは色あせていません。
むしろ、政治に失望しがちな今だからこそ、必要な問いを投げかけているように感じます。
特に、これから社会の中心を担っていく若い世代にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
政治を“誰かの仕事”としてではなく、“自分たちのプロジェクト”として考えるきっかけを与えてくれる本だと言えるでしょう。
おすすめの人
・政治や行政に運営する人、疑問を感じる人
・テクノロジーと社会の関係に関心がある人
・これから社会に出ていく若い世代