アート 書籍

『どうやって美術品を守る? 保存修復の世界をのぞいてみよう』

2025年8月17日

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書誌情報

・タイトル:『どうやって美術品を守る? 保存修復の世界をのぞいてみよう』
・著者:ファビエンヌ・マイヤー,ジビュレ・ヴルフ(作),マルティナ・レイカム(絵),田口かおり(監訳),中村智子(翻訳)
・出版社:創元社
・発売日:2025/5/13
・ページ数:82頁

目次

なし

感想

本書は、美術品の保存修復の世界を紹介する絵本です。

絵本と聞くと子ども向けのイメージがありますが、内容はむしろアートを愛好する大人の知的好奇心を刺激するもので、専門書よりも読みやすく、深い情報が得られます。

保存修復という世界があるのはもちろん知っていましたが、ここまで具体的に、しかも親しみやすく紹介してくれる本に初めて出会いました。

ページをめくるたびに、美術館の裏側で行われている仕事の多さに驚かされます。

絵画がや彫刻は、ただ展示されているわけではありません。

適切な温度や湿度の管理、輸送・梱包、作品ごとの素材調査など、見えない努力の積み重ねによって、私たちは作品を安全な状態で鑑賞できているのです。

修復に使われる道具も多種多様で、X線や特殊な光を用いた調査から、ごく細い筆やナイフによる繊細な作業まで、まさに職人技の連続です。

驚いたのは、その作業に関わる人の幅広さです。

保存修復士だけでなく、学芸員、研究者、輸送専門のスタッフ、展示環境を整える技術者まで、多くのプロフェッショナルが関わって作品を支えています。

最近はアート作品の価格が高騰していますが、これだけの人と時間が使われていると考えると、それだけの価値があるんだなと納得させられます。

これからは今までとは見る視点を変えて、美術館では絵をもっと細かく見て、美術館で働いている人たちにも注目したいなと思いました。

アートの新たな一面を知るきっかけとして、とても良い絵本だと思います。

「作品を観る」という体験に、「作品を守る」という視点を加えてくれる、すばらしい入門書だと思います。

おすすめの人

・アートや美術館が好きな方
・美術修復に興味のある方
・文化財保存などに興味のある方

あと一冊

ポイント

美術品修復といえばこのマンガ!主人公の藤田玲司は天才的な美術修復の技を持つ画商です。贋作や盗作など美術の裏も描きつつ、社会問題や人間模様を描く作品です。深い美術への愛と知識に裏打ちされたこのマンガは、美術が好きな人なら誰にでもおすすめです。ただしドぎつい表現もあるのでそういうのが苦手な人は要注意です。

  • この記事を書いた人

yutoya

書肆北極点店主。本を紹介する人。本が好きです。一冊読んだら十冊読みたくなる、本がつながっていく感じも好きです。

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