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書誌情報
・タイトル:『どうやって美術品を守る? 保存修復の世界をのぞいてみよう』
・著者:ファビエンヌ・マイヤー,ジビュレ・ヴルフ(作),マルティナ・レイカム(絵),田口かおり(監訳),中村智子(翻訳)
・出版社:創元社
・発売日:2025/5/13
・ページ数:82頁目次
なし
感想
本書は、美術品の保存修復の世界を紹介する絵本です。
絵本と聞くと子ども向けのイメージがありますが、内容はむしろアートを愛好する大人の知的好奇心を刺激するもので、専門書よりも読みやすく、深い情報が得られます。
保存修復という世界があるのはもちろん知っていましたが、ここまで具体的に、しかも親しみやすく紹介してくれる本に初めて出会いました。
ページをめくるたびに、美術館の裏側で行われている仕事の多さに驚かされます。
絵画がや彫刻は、ただ展示されているわけではありません。
適切な温度や湿度の管理、輸送・梱包、作品ごとの素材調査など、見えない努力の積み重ねによって、私たちは作品を安全な状態で鑑賞できているのです。
修復に使われる道具も多種多様で、X線や特殊な光を用いた調査から、ごく細い筆やナイフによる繊細な作業まで、まさに職人技の連続です。
驚いたのは、その作業に関わる人の幅広さです。
保存修復士だけでなく、学芸員、研究者、輸送専門のスタッフ、展示環境を整える技術者まで、多くのプロフェッショナルが関わって作品を支えています。
最近はアート作品の価格が高騰していますが、これだけの人と時間が使われていると考えると、それだけの価値があるんだなと納得させられます。
これからは今までとは見る視点を変えて、美術館では絵をもっと細かく見て、美術館で働いている人たちにも注目したいなと思いました。
アートの新たな一面を知るきっかけとして、とても良い絵本だと思います。
「作品を観る」という体験に、「作品を守る」という視点を加えてくれる、すばらしい入門書だと思います。
おすすめの人
・アートや美術館が好きな方
・美術修復に興味のある方
・文化財保存などに興味のある方