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書誌情報
・タイトル:『心眼 あなたは見ているようで見ていない』
・著者:クリスチャン・マスビアウ(著),斎藤栄一郎(訳)
・出版社:プレジデント社
・発売日:2025/1/30
・定価:2400円+税
・ページ数:328頁目次
はじめに
何よりも難しいのは、本当にそこにあるものを見ることである
見る作法
パート1 準備編 何かを見ている自分自身を見るという練習
知覚の魔法
最初のルッキングラボーゲシュタルトの物語
現代の3人の芸術家がつくるゲシュタルトーしきたりや常識にとらわれずに見る
準備編の参考資料 世界の見方を巡る6つのよくある誤解
パート2 実践編
大発掘―純粋な観察から始める論文や思考に学ぶ観察術 実践を触発する練習
見ることのイノベーションー疑いのレンズで見る
聞く作法―社会の沈黙に注意を払う
文化的な変化を探す―変化はどのように起こるのか
細部を観察する―気づきへの入り口を見つけるということ
現在に未来を見るということ―私のルッキングラボ物語
ハヤブサがすべて教えてくれる
観察には時間がかかる
感想
本書は「見る」という行為をテーマに、多角的に考察した一冊です。
哲学や文化人類学、芸術家といった人文的分野から、クレー射撃など様々な角度から「見る」ことの意味や難しさが語られます。
著者は冒頭で「何よりも難しいのは、本当にそこにあるものを見ることである」と述べ、その実例を3つ挙げます。
最初の例では、記者が若者たちによるデモを取材した際の出来事が紹介されています。
記者は声をあげる参加者ばかり注目し、その背後で静かにデモを見つめる人たちを見逃します。
彼らこそが社会から忘れ去られた年配世代で、国内での極右勢力の台頭を支持している層なのです。
つまり記者は目立つものにばかり目を奪われ、より重要な背景を見逃したのです。
このように前景だけ意識が向き、背景を見ないことで見逃すことがたくさんあるのです。
本の中では、この他にも「見る」ことに関する多様な事例が取り上げられ、丁寧に考察されています。
読んでいて印象的だったのは、「見る」ことに集中すると世界の複雑さと豊かさが見えてきたことです。
単純な言説に流れがちな現代社会ですが、世界はもっと奥行があって魅力的なんだと気づかされました。
そのためにも「見る」という行為は重要な技術なのです。
一見ビジネス書のような本ですが、人文的な思考を促す内容でもあります。
もしかしたら人生に迷いのある人にも役に立つかもしれません。