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書誌情報
・タイトル:『15分都市 人にやさしいコンパクトな街を求めて』
・著者:カルロス・モレノ(著),小林重裕(訳)
・出版社:柏書房
・発売日:2024/8/27
・ページ数:270頁目次
序文
はじめに 都市に住む権利、都市で生きる権利
第1章 生きている都市 過去の都市、今日の都市、未来の都市:生きる場所
第2章 気候への課題 環境変動にさらされた街と都市生活
第3章 都市の複雑性 多様な顔を持つ都市:不完全、未完成、脆弱な都市
第4章 都市に生きる権利 都市への権利から都市の中で生きる権利へ
第5章 持続可能な大都市 町は何よりも長く続いていく
第6章 近接性の実験 15分都市
第7章 大転換 大都市化、グローバリゼーション、地域
第8章 ユビキタスな街へ 21世紀のテクノロジー、いたるところに接続する都市
結論 新型コロナウイルスとともに生きる現在、未来はどうなるのか
解説 サスキアン・サッセン
感想
カルロス・モレノは、フランスを拠点に活動する都市学者で、持続可能性や近接性を軸にした新しい都市設計を世界に発信してきました。
彼が提唱する「15分都市」は、国際的に注目を集めている革新的な都市モデルです。
本書はその構想に至る背景と基本的な思想を、著者自身が理論の部分を丁寧に解説した書となります。
まず著者は現代都市の実態を冷静に分析します。
交通渋滞や過密化、格差の拡大といった問題に加え、地球規模の環境危機も都市の在り方に深刻な影響を与えています。
拡大と複雑化を続ける都市は、課題の解決をますます困難にし、持続可能な未来像を描くことを難しくしているのです。
これらを踏まえて著者が提起するのが「15分都市」です。
「15分都市」とは、住まいや仕事、教育、医療、文化など日常生活に必要な要素に徒歩や自転車で15分以内にアクセスできるような都市設計。
これは単なる利便性の提案ではなく、生活圏をコンパクトにすることで移動時間を短縮することで環境負荷を減らし、地域コミュニティの再生を促し、住民の生活の質を高める包括的な都市戦略です。
何より移動時間の削減は、個人の生活にゆとりをもたらし、充実した人生を送ることに繋がります。
本書ではこの理念に至るまでの思考の歩みや、どのような変化ももたらすかまでが理論と実践の双方から詳細に語られています。
本書を読んで、著者が深く都市を研究し、その未来に強い危機感を抱いていることを感じました。
気候変動や資源制約といった地球規模の問題に対し、都市が果たすべき役割を真摯に考え、行動に移そうとする姿勢が感じられます。
著者にとって「15分都市」は理想論ではなく、持続可能な社会を築くための必然的な道筋として提示しているのです。
この本は都市計画や環境問題に関心を持つ読者だけでなく、日々の暮らしを見つめ直したい人にも大きな示唆を与えるでしょう。
そして都市や環境の問題を遠い話ではなく、自分自身の生活と地続きのものとして捉える必要性を感じました。
都市計画に携わる行政関係者や都市計画家はもちろん、地域の商業やサービスに関わる人々など多くの方に読んでいただきたい一冊です。